第5回 代表者の戯言 初めて就職した会社の思い出
何度も何度も同じ夢を見てしまうことがあり、それは私は一番最初に就職先として勤めた会社に復帰する夢である。今回はこの会社のことについてお話しをしたい。それはもう20年以上前の話であるが、その会社は千葉県にある輸入代理店であった。
私は2000年あたりに就職した。その頃は超就職氷河期と言われ、新卒の大学生がなかなか就職先が見つからないということが社会問題となっていた。私も学生時代に就職先を見つけることができなかったその一人であり、大学卒業後は自らが所属した大学の図書館で英語と数学の勉強をし、就職先をせっせと見つけるという日々を過ごしていた。自分の人生は一体、どうなるのだろう、これからの日本は一体どうなってしまうのだろう、毎日が不安だらけだった。4月以降、芸能プロダクションやレコーディングスタジオ会社など、数件の就職の誘いはそれなりにあったものの、条件面や待遇面、時期的なものでなかなか折り合いはつかず、結局最後はA社に入社することになった。(色々とあるので、具体的な会社名は非公開とさせていただきたい)
10月、最初は総務部に配属されて入荷商品の伝票のチェック、取引先への注文書の作成、お客様への配送時の納品書チェックなどが私の仕事であった。大学生時代に進学塾のアルバイトを4年間していたため、私はそれなりの社会経験はあると自負していたものの、一日12時間労働、昼飯を食べる暇なく、とにかく忙しい毎日を過ごしていた。2か月後に営業部に配属。ここからさらに忙しさが増してきた。そしてA社の問題点が次々と明らかになってきた。具体的には下記のとおりである。
◆社長や取締役や上司に日常茶飯事に怒鳴られる。お客様がいる前でも、同僚がいる前でも。私に非があることならば数歩下がって反省はできるのだが、意味不明な理由で怒鳴られることもしばしば。
◆私の席の挟んだ両隣で、営業部長と社長が喧嘩をしはじめる。
◆社長の気分の起伏が激しく、その日によって指示が変わったりする。
◆社長の意見に沿わないことがあったら、平気で部署移動させられる。
◆研修が全くなく、突然、営業電話を取ることが課される。
◆残業代が出ない。
◆ミスをすると減給処分がある。
◆離職率がものすごく高い。1名が新しく入社すると1名が退社する印象。仮にもし、下記の計算方法を使うならば、1年間あたりの離職率は50%くらい。
離職率 = 離職者数 ÷ 常用労働者数 ×100(%)
◆その日の社長の気分によって会社の雰囲気が変わる
◆社長が来ない日はほぼ全員、定刻時間に帰宅する。
◆社内の雰囲気がすごくよくない。ミスがあれば、減給処分を恐れて他人のミスかのように振る舞う社員が何人もいる。
その当時はブラック企業という言葉がなかった時代。パワハラという言葉もなかったように思う。就職超氷河期ということもあり、私としては会社に対して気に入らないことがあってもすぐに退職する、というのがなかなか憚れた。私も何とか一年半の間、踏ん張った。何とか我慢をした。その後、取引先の社長の誘いで他社に移動することになったのだが、あの頃のキツさ、とか組織のあり方、経営方法などはそれなりに体験できたし、それなりに勉強はできた。今となればいい経験になったかもしれない、とも思うのだが、あの頃に戻りたいとは思わない。だから、なぜ、あの会社に復帰する夢を何度も見るのか、自分でも不思議なのである。
最後に一つ。これから仕事を見つける若い人たちにアドバイスを送りたい。2000年あたりは【2ちゃんねる】や【転職会議】といった掲示板がまだあまり有名ではなかったため、あらかじめ自分が就職するであろう会社の様子などを調べることはかなり困難を極めた。しかし、今は皆さんはそれが出来る。だから、必ず就職前にインターネットを活用して下調べをしてほしい。