第一回 プログラマー 中野氏との対談
羽鳥:ホームページ作成の仕事はありますか?
中野:ないわけではないのですけれど、個人で受注してしまうと絶対に採算が取れないですね。大量のテンプレートを持っている規模が大きな会社がやっぱり強いです。そういった会社は通常のホームページなら3日くらいで作成できると思います。仮にフリーランスの方に10日間くらいでホームページを作成したとしても、一日あたり1万円で換算したとして10万円かかります。だから、個人にホームページ作成をお願いするとしても、そのウェブデザイナーが技術的な要件を全部頭に入れておいても結構、時間と費用がかかってしまうのです。だったら、大量のテンプレートを持っている中規模の会社が2~3万円で受注する会社がいっぱいあるので、そういった会社を選んだほうがいいような気がします。
羽鳥:webサーバーを社内に置いている会社はあると思いますか?羽鳥としては、中規模くらいの会社ならwebサーバーも独自に社内に置いていると思うのですが?
中野:いや、今は全くないと思います。やっぱりVirtualMachineのほうが楽だからです。場所を取らないし機械が故障しないからです。AWSを利用する際に何が一番いいかといいますと、故障しないということが挙げられます。AWSは仮にサーバーセンターのマシンが一台、壊れたとしても生きているマシーンにデータを移動させて引き続き動かせます。もし社内にwebサーバーを配置したとして、それを一台壊れたときのために、自社内に10台くらいのコンピューターを所有する、というわけにはいかないじゃないですか。VMの場合、壊れたとして自動的にすぐにその前の状態に復元できるんですよね。それと、データを外部に公開するならば、それなりにセキュリティ対策をしなくてはいけないじゃないですか。AWSとGCPの場合は、セキュリティは手前でやってるんですよ。基本的には自分らがミスを起こさないのであれば、外からの攻撃は対応してくれているので、それが圧倒的にメリットです。あとは監視しなくていいことです。昔、物理サーバーを自前で構築する案件を受注したことがあるのですけれど24時間監視しなくてはいけないんで。コーポレートサイトぐらいだったら、例えば朝、出社をしたとして、もしもサーバーが固まっていたとしたら慌てて復旧すれば何とかなりますけれど、24時間ユーザーフルサービスだとそういうわけにはいかないので。
羽鳥:これから伸びる企業ってなんだと思いますか?例えば先日の報道では。NVIDIAが世界地価総額のランキング1位になったそうですね。CPUを販売している会社なら、そのほかAMDとかINTELでもいいような気がするのですが。
中野:私もあまり詳しいことはわからないのですが、今のAIってグラフィックカードが持つ技術を利用しているようです。コンピュータの演算処理とAIの演算処理の方法が根本的に違うみたいです。
羽鳥:CPUを並べて計算させる、ではダメなんですか?
中野;いやいやいや、CPUの技術とグラフィックカードの持つ技術というのが根本的に違うのです。CPUって一つ一つの処理ををバーって流すんですけれど、GPUで並列演算で同じ作業を同時にまとめてやるのがすごい得意なんです。ざっくりいうと、CPUはシリアル処理であるのに対してGPUはパラレル処理ということになります。GPUは同時に大量のチャレンジをしているんです。指定された質問に近い回答なのか遠い回答なのかをせーのドン!で1億や10億回繰り返して答えに近づける、といった処理ですね。
羽鳥:中野さんは普段、どのようなコンピューターで仕事をされているのですか?
結局、家庭で一番パワーが必要とされるソフトってゲームなんですよ。ゲーム開発って、パワーが必要している処理が実行されている段階で、なおかつ裏側で色々と動かさなくてはいけないので、ゲーム用のマシンで一番スペックが高いようなPCを使わなくてはいけないんですよ。
羽鳥:これからどんなソフトウェアとかそのほかの仕組みが出てくると思いますか?僕は思うのですけれど、今後はマテハンの技術がかなり進んでいくのかな、と思います。例えば、お客様側がウェブサイトでピピっと注文したら、自動的に倉庫から商品が出てきて、自動的に送り状を書いてくれて、自動的に梱包されて、なおかつ自動的にトラックの中に積み込まれるという。今、そのソフトウェアとか仕組みとかを検討しているんですよ。でもこれって初期投資がかなりかかってしまうのだろうな(笑)
中野:そういった仕組みに限らず人間は働かなくなるんじゃないですか。8割の仕事がAIとかロボットに代替されたら人間は働かなくなりますよ。そして残りの2割ぐらいが趣味で働くということが起きえると思います。機械とAIで自動的にすべてのモノづくりが可能になるんだとしたら、物は無限になります。そうすると、最終的に価値を持つのは土地です。土地はAIでもロボットでも増やせないです。
羽鳥;今のテクノロジーから考えて、おそらくこれから医療が変わると思います。クリニックにもいかなくてよくなる時代が来ると思います。自宅ですることといえば、血圧と体重とか体温とかのデータとその日の血液を採取してそれを自動的に分析する機械があって、AIの医者がアドバイスをくれる、というようなシステムができると思います。
中野:内視鏡検査にはAIがもう搭載されているようですよ。先日、内視鏡検査を受けたんですけれど、ちょうどその日に最新の内視鏡検査の機械が担当医のところに納品されたみたいで、担当医がノリノリで使用してました。
羽鳥:それからあとはバーチャル彼女みたいなものが出てくると思います。顔の形をしたアンドロイドと声。会話はAIで生成するという。でもそうすると実際の彼女とかが必要なくなって、彼女作りとかしなくなるのかな(笑)
中野:でも割りと厄介ななんですよね。最終的にはやっぱり人間がいてほしいものなんですよ。これ、僕の意見ではないですけれど。
羽鳥:あ、実はそういった部分がソフトウェア開発ですごく大切なところなんですよ。ソフトウェア制作でそういった人間的な部分をどうやってカバーしていこうかな、みたいなすごく参考になる部分です。
中野:結局、人間からの問題だと思うんですよね。100%人間が作ったものと同じものがAIなどの技術で作れたとしても結局のところ、ダメなような気がします。例えば、【うどん】と【手打ちうどん】という商品があったとしたら【手打ちうどん】のほうがおいしいと錯覚してしまう、あの感情なのだと思います。【手打ちうどん】のほうが価値が高いのではないか、と。今の若い世代がそういう概念を持たなくなって初めて時代に受け入れられるようになるかもしれません。これが技術の問題ではなくて、受け入れる側の問題です。
羽鳥:このままAIやコンピューター技術が発展したら、どうなると思いますか?羽鳥としては、おそらく芸術家とか音楽家がAIに代わると思います。例えば、ピカソっぽい絵を描いてください、と指示すれば描けるようになっているそうですし、音楽に関しても【エスニックな音楽を作ってください】と指示すれば作れるそうですし。